(最終報告書)技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議
法務省 出入国在留管理庁HPより抜粋
最終報告書(概要)
(技能実習制度及び 特定技能制度の 在り 方に 関する 有識者会議)
令和5年11月30日
① 見直しに当たっての基本的な考え方
◎見直しに当たっての三つの視点(ビジョン)
国際的にも理解が得られ、我が国が外国人材に選ばれる国になるよう、以下の視点に重点を置いて見直しを行う。
外国人の人権保護
外国人の人権が保護され、労働者としての権利性を高めること
外国人のキャリアアップ
外国人がキャリアアップしつつ活躍できる分かりやすい仕組みを作ること
安全安心・共生社会
全ての人が安全安心に暮らすことができる外国人との共生社会の実現に資するものとすること
◎見直しの四つの方向性
1 技能実習制度を人材確保と人材育成を目的とする新たな制度とするなど、実態に即した見直しとすること
2 外国人材に我が国が選ばれるよう、技能・知識を段階的に向上させその結果を客観的に確認できる仕組みを設けることでキャリアパスを明確化し、新たな制度から特定技能制度への円滑な移行を図ること
3 人権保護の観点から、一定要件の下で本人意向の転籍を認めるとともに、監理団体等の要件厳格化や関係機関の役割の明確化等の措置を講じること
4 日本語能力を段階的に向上させる仕組みの構築や受入れ環境整備の取組により、共生社会の実現を目指すこと
◎留意事項
1 現行制度の利用者等への配慮
見直しにより、現行の技能実習制度及び特定技能制度の利用者に無用な混乱や問題が生じないよう、また、不当な不利益や悪影響を被る者が生じないよう、きめ細かな配慮をすること
2 地方や中小零細企業への配慮
とりわけ人手不足が深刻な地方や中小零細企業において人材確保が図られるように配慮すること
②提言
1新たな制度及び特定技能制度の位置付けと両制度の関係性等
•現行の技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設。
•基本的に3年間の育成期間で、特定技能1号の水準の人材に育成。
•特定技能制度は、適正化を図った上で現行制度を存続。
※現行の企業単独型技能実習のうち、新たな制度の趣旨・目的に沿うものは適正化を図った上で引き続き実施し、趣旨・目的を異にするものは、新たな制度とは別の枠組みでの受入れを検討。
2新たな制度の受入れ対象分野や人材育成機能の在り方
•受入れ対象分野は、現行の技能実習制度の職種等を機械的に引き継ぐのではなく新たに設定し、特定技能制度における「特定産業分野」の設定分野に限定。
※国内における就労を通じた人材育成になじまない分野は対象外。
•従事できる業務の範囲は、特定技能の業務区分と同一とし、「主たる技能」を定めて育成・評価(育成開始から1年経過・育成終了時までに試験を義務付け)。
•季節性のある分野(農業・漁業)で、実情に応じた受入れ・勤務形態を検討。
3受入れ見込数の設定等の在り方
•特定技能制度の考え方と同様、新たな制度でも受入れ対象分野ごとに受入れ見込数を設定(受入れの上限数として運用)。
•新たな制度及び特定技能制度の受入れ見込数や対象分野は経済情勢等の変化に応じて適時・適切に変更。試験レベルの評価等と合わせ、有識者等で構成する会議体の意見を踏まえ政府が判断。
4新たな制度における転籍の在り方
•「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲を拡大・明確化し、手続を柔軟化。
•これに加え、以下を条件に本人の意向による転籍も認める。
➢計画的な人材育成等の観点から、一定要件(同一機関での就労が1年超/技能検定試験基礎級等・日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格/転籍先機関の適正性(転籍者数等))を設け、同一業務区分に限る。
•転籍前機関の初期費用負担につき、正当な補塡が受けられるよう措置を講じる。
•監理団体・ハローワーク・技能実習機構等による転籍支援を実施。
•育成終了前に帰国した者につき、それまでの新たな制度による滞在が2年以下の場合、前回育成時と異なる分野・業務区分での再入国を認める。
•試験合格率等を受入れ機関・監理団体の許可・優良認定の指標に。
5監理・支援・保護の在り方
•技能実習機構の監督指導・支援保護機能や労働基準監督署
・地方出入国在留管理局との連携等を強化し、特定技能外国人への相談援助業務を追加。
•監理団体の許可要件等厳格化。
➢受入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与の制限/外部監視の強化による独立性・中立性確保。
➢職員の配置、財政基盤、相談対応体制等の許可要件厳格化。
•受入れ機関につき、受入れ機関ごとの受入れ人数枠を含む育成・支援体制適正化、分野別協議会加入等の要件を設定。
※優良監理団体・受入れ機関については、手続簡素化といった優遇措置。
6特定技能制度の適正化方策
•新たな制度から特定技能1号への移行は、以下を条件。
①技能検定試験3級等又は特定技能1号評価試験合格
②日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)合格※当分の間は相当講習受講も可
•試験不合格となった者には再受験のための最長1年の在留継続を認める。
•支援業務の委託先を登録支援機関に限定し、職員配置等の登録要件を厳格化/支援実績・委託費等の開示を義務付け。キャリア形成の支援も実施。
•育成途中の特定技能1号への移行は本人意向の転籍要件を踏まえたものとする。
7国・自治体の役割
•地方入管、新たな機構、労基署等が連携し、不適正な受入れ・雇用を排除。
•制度所管省庁は、業所管省庁との連絡調整等、制度運用の中心的役割。
•業所管省庁は、受入れガイドライン・キャリア形成プログラム策定、分野別協議会の活用等。
•日本語教育機関の日本語教育の適正かつ確実な実施、水準の維持向上。
•自治体は、地域協議会への積極的な参画等により、共生社会の実現、地域産業政策の観点から、外国人材受入れ環境整備等の取組を推進。
8送出機関及び送出しの在り方
•二国間取決め(MOC)により送出機関の取締りを強化。
•送出機関・受入れ機関の情報の透明性を高め、送出国間の競争を促進するとともに、来日後のミスマッチ等を防止。
•支払手数料を抑え、外国人と受入れ機関が適切に分担する仕組みを導入。
9日本語能力の向上方策
•継続的な学習による段階的な日本語能力向上。
➢就労開始前にA1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格又は相当講習受講特定技能1号移行時にA2相当以上の試験(〃N4等)合格
※当分の間は相当講習受講も可特定技能2号移行時にB1相当以上の試験(〃N3等)合格※各分野でより高い水準の試験の合格を要件とすることを可能とする(4、6に同じ)。
•日本語教育支援に取り組んでいることを優良受入れ機関の認定要件に。
•日本語教育機関認定法の仕組みを活用し、教育の質の向上を図る。
10その他(新たな制度に向けて)
•政府は、人権侵害行為に対しては現行制度下でも可能な対処を迅速に行う。
•政府は、移行期間を十分に確保するとともに丁寧な事前広報を行う。
•現行制度の利用者等に不当な不利益を生じさせず、急激な変化を緩和するため、本人意向の転籍要件に関する就労期間について、当分の間、分野によって1年を超える期間の設定を認めるなど、必要な経過措置を設けることを検討。
•政府は、新たな制度等について、適切に情報発信し、関係者の理解を促進する。
•政府は、新たな制度の施行後も、運用状況について不断の検証と見直しを行う。