第9回有識者会議(2023年6月30日)

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第9回)

法務省 出入国在留管理庁HPより抜粋 

 

 

日時

令和5年6月30日(金)10:00~11:53 

 

場所

法務省5階会議室 

 

出席者(敬称略)

有識者

田中座長、高橋座長代理、市川委員、大下委員、黒谷委員、是川委員、佐久間委員(代理出席)、鈴木委員(代理出席)、武石委員、冨田委員、冨高委員、堀内委員、山川委員

関係省庁等

(内閣官房) 小玉参事官、岡野参事官

(出入国在留管理庁) 福原審議官、本針政策課長、安東室長

(厚生労働省)   原口審議官、吉田外国人雇用対策課長、川口参事官(海外人材育成担当)

(外国人技能実習機構)   大谷理事長 

 

議事内容

 

○ 論点について、【資料1-1】のとおり決定。

 

○ 有志の有識者より、最終報告に向けて自身が考えるあるべき制度の全体像やポイントについて御提案。

 

○ 各有識者より、論点について、下記のような意見があった。 

 

 

【新たな制度及び特定技能制度の位置付けと両制度の関係性等について】

 

○ 人材不足に直面する日本の事業者・産業界の、労働力を確保したいという要望に制度を合わせることが主目的であり、これにより目的と実態が整合し、必要な分野や業種の拡大、受入れ人数を正面から検討することが可能になる。

その上で、一定のスキルを持った人材を確保するために、人材育成も目的に入ると捉えるべきである。

 

○ 両制度の関係については、基本的に特定技能に分野・業種をそろえてキャリアアップしていくことが可能なものとして、連続的に捉える方向性に異存ない。

 

 ○ 家族帯同について、新制度からキャリアアップしていく場合に、特定技能2号に至るまでの間は一律に家族を呼び寄せることができないとすれば、外国人にとって甚だ魅力に欠ける。

「留学」や「文化活動」の在留資格でさえ扶養することができる裏付けがあれば家族帯同を認めているので、資金や経済的な条件を満たす場合には、家族帯同を可能とするのが良い。

 

○ OJTを通じた能力開発による未熟練労働者の育成を基本とする新たな制度において、外国人材を確保し、特定技能制度への移行を円滑にすることで、外国人材がスキルアップしつつ、国内で就労し、活躍できる枠組みとすること。

 

○ 今後の外国人労働者受入れ制度は、技能形成コース及び期限付き就労コースへの再編によるものが望ましく、それによりグローバルコンパクトの特に目標6「労働者の保護」と目標18「スキル形成」との整合性も担保されると考える。

 

○ 新たな制度では人材確保が目的に追加されることから、転職面でも労働者としての側面が重視され、また、労働市場への影響をモニターする透明なシステムが必要になると思われる。

同時に人材育成の観点からは、計画的にスキルを育成して結果を確認する仕組みがとられることとなる。

したがって、新たな制度は単なる非熟練労働力の受入れではない、ある種の人材育成型の受入れシステムと位置付けられる。

他方、特定技能は人材確保が必要な分野での即戦力受入れの制度となるが、高度人材よりスキルレベルが相対的に低いので、国内労働市場への影響や支援等が必要となる。

また、即戦力というスキルレベルが前提となるので、技能実習との関係においては、即戦力レベルに達したという確認ができる形での接合を検討することになる。

また、試験ルートでは即戦力レベルの確認という実質を備えたものが必要となる。

 

○ 企業単独型の扱いについては、実態を見極めていく必要がある。

 

○ 現行の技能実習制度が副次的に担ってきた地方の中・小規模事業者における人材確保の機能を、より一層実効性を高め、人手不足の企業が必要な人材を確保できるような制度設計とすべきである。

 

○ 特定技能制度は、生産性向上支援策、人材確保支援策を講じてもなお人手不足の産業に人材を確保する目的は堅持していただき、新たな制度と特定技能制度のすみ分けを図っていく必要がある。

また、特定技能への移行については、検定の合格、日本語能力試験のN4以上の取得、生活態度・勤務態度が良好である優良な者だけが移行できる制度設計としてもよいのではないか。

 

○ 専門的・技術的分野とはどういうものなのか、また、到達すべきスキルや役割等を検討し、その内容が試験にいかされていくことが必要である。

また、その試験等の内容について一元的にチェックを行う公的な会議体が必要である。

 

○ 新たな制度と特定技能制度の在り方や違いを明確化し、そのうえで適切な受入れ対象範囲、職種、その専門性、在留期間等について整理することが必要である。

 

○ 企業単独型はこれまで企業のグローバルな生産拠点の形成や発展に貢献してきた。国際貢献という目的は新たな制度では前面に出ていないが、労働力確保というよりは技能移転や人材育成の仕組みとして今後も活用されたいという面もあると思うので、我が国の産業競争力強化に資する制度として、企業単独型を適切に位置付けていただきたい。 

 

 

【人材育成機能や職種・分野等の在り方について】

 

○ 現行の技能実習制度のように非常に細かく作業区分を分けて、細かく実習計画を立案するのではなく、特定技能制度への移行を見据えて体系的な能力を身につける観点からの育成を考えるべきである。

このような初期の教育・育成を受けた後は、労働者自らの努力で研さんを積んでキャリアアップできるようにすることが、労使双方にとって有益であると考える。

 

○ 新たな制度においては、技能実習計画に替わるものとして、技能の修得計画、目標設定、経験年数ごとの業務内容や必要資格などの等級制度、研修制度、賃金制度、評価制度などを設定したキャリアパスを受入れ企業が作成することが考えられる。これを技能実習機構が認定し、監理団体や登録支援機関がキャリアパスの作成を支援する仕組みとしてはどうか。

 

○ 新たな制度における人材育成は3年間を基本とし、1年目を基礎的技能の修得期間、2、3年目を専門的技能及び管理能力の修得期間としてはどうか。

より高度な専門的技能の修得及び管理能力の修得を希望する者については、4年目、5年目の滞在を可能とする。

また、それぞれの節目において技能評価試験等により到達度を測定し、一定レベルに達しない者は在留期間を延長しないということが考えられる。

3年目又は5年目で帰国する段階では、現状と同様に、試験を受験することとしてはどうか。

 

○ 技能実習制度の農業職種においては、JA等が実習実施者となり、農業者との農作業請負契約に基づいて技能実習を行うことで、実習実施者ではない農業者のほ場における作業への従事も可能となり、農業の季節性の問題への対応策の側面を持ちつつ、JAを中心とした地域農業システム全体の技能修得が可能となっており、広範な技能や知識の修得に大きく寄与している。

新たな制度においては、出向元との労働契約は維持した状態で、他社で勤務する在席出向を導入することが季節性の問題への有効な対応策として挙げられる。

 

○ 外国人材の能力や経験の客観的な評価による適切な処遇、キャリアパスの明確化による人材育成、人材確保及び受入れ企業等の生産性向上を図る観点から、産業分野ごとにキャリアアップシステムを創設することも有効ではないか。

 

○ 現行の技能実習制度の移行対象職種の作業では行えず、特定技能制度で行うことができる業務があるが、新たな制度においては、特定技能制度で行える業務に一致させる必要がある。

 

また、著しい人材不足に直面している産業分野においては、技術の継承も含め、外国人が活躍できる作業現場の対象拡大が急がれている。

 

○ 技能形成プログラムを実施した事業者に対する経済的動機付けや、同プログラムを良好な成績で修了した者へのインセンティブを通じた技能形成を図る必要がある。

なお、技能形成プログラムを導入するかしないかは最終的には個々の事業者の判断であり、それへの参加も個人の判断であると考えている。

 

○ 技能形成に当たっては、職種ごとに標準カリキュラム等を作成し、勤務時間中に設けられた研修時間等を用いて学習することを制度的に後押しすることが重要である。

また、軸となる技術に関して、技能検定やそれに準拠する試験を行い、その合格をもってプログラムの修了の要件とすることが望ましい。

 

○ 特定技能2号の試験が非常に重要である。

特定技能2号への移行が緩い状態になると労働者が供給過剰となり、制度全体がしまりの悪いものになるため、特定技能2号の試験の受験状況や合格率等をしっかりとハンドルしていく必要がある。

 

○ 新たな制度が人材育成機能を果たせない場合、即戦力とはいえない人材が国内で就労することになる。

また、特定技能制度における試験でも即戦力とはいえない人材が合格して国内で就労することになると、実質は単なる非熟練労働力の受入れを導入することになる。これらの結果、国内労働市場への悪影響、不況期での仕事の奪い合いや労働市場の分断が起き、社会不安の原因となる。

 

○ 育成プログラムをうまく制度設計することによって、人材育成と人材確保が両立できる。企業側にとっても働く側にとってもメリットがあり、選択肢が広がることがポイントである。

業種・職種ごとに育成プログラムを柔軟に設計できるようにすることで、本人の希望に応じて、キャリアアップして滞在が長くなる方と、途中で帰国する方が出てくるのではないか。

 

○ 資格の相互認証については、将来的に理念として相互認証していくことは非常に重要であるが、現時点では、ASEANでも教育レベルをレベリングするのがやっとであるため、今後の検討課題ではないか。

 

○ 働きながら技能を学ぶ新しい制度、その上の一定期間の中で就労する制度、さらに一定の条件をクリアすれば事実上、定住や永住が可能となる制度という3階建ての制度が想定される。

この各階を上がる際には、技能と日本語能力のフィルターを設ける必要がある。

その方法としては、試験もあるが、単位のような考え方もあるのではないか。

また、新制度においては、1年単位で技能修得のカリキュラムを作成し、一定年数以内にカリキュラムを終えられない場合には帰国するといった仕組みも考えられる。

着実な技能習得のために、基本的に1年間は同じ事業所でカリキュラムを受けられる仕組みが組めるのが望ましい。

したがって、転籍は次の1年を開始するタイミングに可能としてはどうか。

途中でカリキュラムから離脱することも可能であるが、その場合には単位が取得できないという考え方もあり得る。

これを法的な制限とするのか、インセンティブの仕組みとするのかという点は慎重に検討すべきである。

また、1年目で得た単位は同じ分野内での転籍であれば有効とし、他の分野に移るときは無効となるという仕組みも考えられる。

このような各分野における技能修得を積み重ねていく仕組み、人権保護などを踏まえた適正な受入れの仕組み、就労継続につながるインセンティブの仕組みを、各業界、分野の実態を踏まえ、所管省庁と業界団体が協力して構築する必要がある。

 

○ 職種・分野の在り方について、基本的には特定技能の分野のように幅広めの分け方にする必要がある。

また、中間報告書が提出されてから、繊維業界や運輸業界などから追加の検討を進めてほしいとの意見がある。

新たな制度と特定技能制度の対象分野に組み込めるか、一定の検証の下で検討する必要がある。 ○ 新たな制度においても、現行の技能実習制度の必須業務のようにコアとなる業務は残し、その業務で培った成果を評価していく仕組みは継続していくべきである。

 

○ 現行の技能検定制度においては、職種・作業をするのに用いられている業務内容と試験内容とにそごがあることが課題である。

技能実習生を受け入れたいがために事業所で実際にやっていないことを偽装して技能実習計画の認定を受ける企業があれば排除すべきであるとは思うが、試験内容が過去から一切アップデートされていないのであれば、現状に即して大幅に見直す必要がある。

 

○ 現行の技能実習制度の移行対象職種の追加に当たって、業界から上がってきた要望をそのまま聞くのではなく、技能評価の在り方等を確認した上で追加していくプロセスが非常に重要である。

新たな制度においては、政公労使で構成される審議会等でしっかり審議し、決定していくことが必要である。

 

○ 産業分野別のキャリアアップシステムや標準カリキュラムを作り、受入れ企業がそれに沿って上手に育成ができるような仕組みを作っておかないと、賃金だけで人が動くような労働市場になることが懸念される。

受入れ企業に人材育成を真剣にやってもらえるような制度設計が必要である。

 

○ 人材育成の成果をどのように測定するかも非常に重要である。技能検定の仕組みがうまく機能しているのかも考える必要がある。

 

○ 技能検定を軸にすることが重要であり、技能水準全体を担保しつつ、より就労の現場に沿った形で試験を設計していくことになるのだろう。

 

○ 技能実習制度において人材育成が担保されていなかったという課題等も踏まえ、単に日常業務を遂行することで身につくスキルということではなく、より積極的な人材育成を講じる必要がある。

また、スキルの向上は賃金や処遇の向上につながり、外国人本人のモチベーション向上だけでなく、人材の定着や日本で働くことを選択する要素にもなり得る。この点、日本人との同等報酬要件の実効性確保について公的な会議体において検討することが必要である。

 

○ 職種・分野については、新たな制度と特定技能制度の職種の接続性を重視し、機械的に一致させるのではなく、妥当性や必要性の観点から丁寧に検討するべきであり、労使を含む関係者を交えた場で議論を行うことが重要である。

 

○ 現行の技能実習制度の前職要件は形骸化しているという意見もあったが、労災が多い職種・分野は引き続き必須とすべきではないか。

また、来日前に想像していた業務と実際の業務のギャップが転籍につながることがないよう、送出機関や監理団体等による入国前の十分な説明が必要ではないか。

 

○ 現行の技能実習制度でも実習内容やその結果を測る試験が設けられているが、実態として、職種の中には5年も掛けて修得する技能なのかというものもある。

人材育成を担保する観点からも、評価の仕組みを整理する必要がある。

 

○ 技能実習制度においては「技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議」が設けられているが、その実効性、専門性を高めつつ、特定技能も含めて業界ごとの試験等の内容を議論することが必要である。

その上部会議体として、総合的に内容を検討する会議体を設けて、外国人労働者の受入れを含めて恒常的に議論を行っていく必要があるのではないか。

 

○ 新たな制度と特定技能制度の接合性に関して、業務区分を大綱化することと、育成計画を個人で持ち運び可能にすることは、人材育成機能があっても転籍をより容易にする機能も持つことになるのではないか。

 

○ 現行の技能実習制度における業種追加プロセスの専門家会議については、新たな制度の下では労働市場への影響という観点からも検討がなされることになるので、透明化のプロセスとしてより重要になる。

 

○ 技能育成プログラムについて、最初の段階での育成とその後の特定技能に結び付く意味合いでの育成は、段階やニュアンスが異なってくるのではないか。

最初の育成は最低限必要な技能を義務的に身に付けるものであり、その後は企業と各自の努力で、特定技能に結び付く任意のプログラムを作り、その評価は最終的に特定技能へ移行する段階でチェックするという形で考えていい。後半の育成は本人と企業にとってインセンティブを与えて評価していくというような、がちがちに締めるような性格のものでなくてもいいのではないか。

 

○ プログラムを通じて育成し、レベルが向上していくわけであるから、当然処遇も改善されるべきである。

無用に長期間低賃金で働かせることがないよう、スキルレベルと処遇の改善を客観的にチェックできる仕組みを合わせて作る必要がある。

 

○ 農業の分野では、前職要件は撤廃してもよいのではという意見がある。

共に仕事をしながら育成をしていくとなると、前職要件はいらないのではないか。

 

○ 人材育成という観点から新しい制度を考える点について大きな方向性は同じだが、業種ごとにどのように行うのが最も効果的、効率的かということを詰めていく必要があるのだろう。

業種を現行の技能実習のように細分化せず、大くくりにしたときに、どのようなカリキュラム、試験にするのか、業界ごとにいろいろな考えがあるのだろうが、この会議においてどのような方向性で作るのがいいのかを示せればよい。

 

○ 育成プログラムについては、各業界の実態に合わせ、汎用的に使えるような形で決めていくことになると思うが、業所管省庁と業界団体がどれだけ綿密に連携できるかという点が重要であり、相当な労力が必要になるだろう。

 

○ 建設分野では育成プログラムをある程度作成しているし、厚生労働省でもジョブカードというスキル形成状況を明確にして個人別に示せるものがあるので、これらを参考7  にするのもよいと思う。

 

○ 育成プログラムについては、業界や業種ごとに差異があるが、同時に企業ごとにも差がある。

企業として長期的に外国人を育成して戦力化していく、そのためのプログラムもあるので、柔軟性と標準化のバランスをとることが非常に重要である。

 

○ 隣接する業種があると業種をまたいで働くこともあると思うが、その場合には業所管省庁がうまくリーダーシップをとって仕切っていくことや、また、外国人がキャリアアップできる制度設計やガイドラインの作成が必要となるのではないか。

 

○ 業界ごとのプログラムがあると育成に非常に効果的である。また、基本的な社会人としての基礎力についても標準化されたものがあるといい。

 

○ カリキュラムの中では、社会人基礎力のような業界に共通する内容をミニマムベースで設け、その上で各業界に合わせたものを整備し、これらを組み合わせることで底上げができるのではないか。 

 

 

【受入れ見込数の設定等の在り方について】

 

○ 未熟練労働者として入国した外国人が人材育成期間を経て、将来的に専門的・技術的な特定技能2号となり、中長期に日本で活躍できるよう連結性を持たせる仕組みになるのであれば、受入れ見込数の設定の可否については慎重に判断する必要がある。

 

○ 新制度と特定技能制度がつながった場合、どの範囲で受入れ見込数を設定するのかを整理する必要がある。

新制度で受入れ見込数を設定することについては議論が必要である。

また、新制度においては、現行の技能実習制度と同様に、企業ごとの受入れ人数の制限を残し、優良な受入れ企業においてはその上限を引き上げ、優良でない企業は上限を引き下げるという仕組みとする必要がある。

 

○ 新たな制度においても受入れ見込数の設定は必要である。

日本人の雇用や監理団体が監理できる範囲にも留意しつつ、特定技能で用いられている入口の入国者数の総数設定と、各企業での受入れ可能人数の設定を二重でしていく必要がある。

この人数の設定のプロセスにおいては、公労使で構成される審議会等で決定した上で、定期的に状況を監視していく必要がある。

 

○ 受入れ見込数の設定については、労使など関係者が参画し、受入れ人数規模を見直す場で必要性等について検討いただきたい。

特定技能制度においては、建設や介護分野のように事業所単位で上限がある分野もあるので、他の分野においても労働者の専門性、技術性をより高めるために、一定の規制を導入するべきである。

 

○ 企業に人材育成ができる体制があるかという観点から、新たな制度でも受入れ人数枠は維持すべきである。

 

○ 対象職種の追加等を設定するための会議体を作ることは賛成だが、外国人材の受入れには地域での生活者としての受入れについても考える必要があることから、労使だけでなく、例えば自治体の代表者や、法テラスのような相談を受ける窓口を担当しているところも加わって、各地の実態を踏まえて議論していく必要があるのではないか。 

 

 

【転籍の在り方について】

 

○ 転籍の自由をどこまで認めるかが、新制度を単なる技能実習制度の看板の付け替えだという批判に耐え得るかの試金石である。

ヒアリングでも、転籍は、労働者が自ら権利を行使し、自らを守ることができる条件を作るという意味で重要であるとの指摘があった。

さらに、欧米では人権とビジネスの観点から、サプライチェーンの全過程が取引相手からも厳しくチェックされる流れがあることから、国際的な潮流に遅れないことが必要である。

 

○ 転籍が在留資格の喪失につながるような強い形の転籍制限を行うとすれば、転籍制限は真に必要な期間に限って認めるべきであり、監理費の金額も参考とすると、2年あるいは3年に及ぶような制限は合理性がないのではないか。

 

○ 転籍制限緩和の方向性として、就業開始から一定期間以降に転籍可能とすること、また、同一分野内での転籍を許容することはあり得る。

しかし、何らかの理由があることを条件とすることには反対である。

現行の技能実習制度下でも、実習が困難な事情があれば転籍可能となっているが、転籍を希望する側が問題の存在を立証しなければならず、また、審査を正確に行うためには時間も掛かることから、失踪につながっている可能性がある。

また、特定地域内での転籍に限定することも、法理論的に許されるのか、問題が残る。

 

○ 求人・求職のマッチングについては、公的な機関ができるだけ関与していく方向性が必要である。

要件を満たす求人事業者を事前審査の上リスト化し、求職者も条件を満たすことをあらかじめ認証した上で、ハローワークや優良な民間職業紹介事業者、あるいは本人がマッチングを直接行う仕組みにすることが必要である。

求人と求職の双方に明確性・透明性があれば、悪質なブローカーが入り込む可能性は小さくなる。

監理団体が転籍を希望する外国人労働者に公平に対応することは難しいので、転籍の場面では、ハローワークや民間職業紹介事業者が中心的な役割を担うべきである。

また、このようなマッチングによって、入管の在留資格の審査も迅速に行えるようになるのではないか。

 

○ 転籍は同一職種内に限り認めてはどうか。ただし、技能修得という人材育成の観点から、1年目は、人権侵害や法令違反等があった場合は除き、原則として転籍は認めないこととしてはどうか。

また、転籍にあたっては、外国人技能実習機構に仲介・マッチング機能を持たせ、営利企業が参入できないようにすることも必要ではないか。

または、外国人技能実習機構が産業分野ごとのキャリアアップシステムを運用する機関に業務委託することも考えられるが、その場合には求人情報の登録や就職あっせん等の機能を加えることが必要である。

 

○ 企業側の都合による転籍の場合は新たな受入れ企業側にコストを請求できないものとし、本人の自己都合の場合は新たな受入れ企業側にコストを請求できるものとしてはどうか。

ただし、受入れに掛かった費用のうち請求できるものの明確化や既就業期間、採用人数に応じた低減率の設定など、産業分野ごとにガイドラインを作り、ルール遵守を徹底する取組が重要になる。

 

○ 入国後の技能形成においては、転籍制限の緩和又は一定期間後に転籍制限を撤廃することも考えられる。

必ずしも転籍制限と技能形成はセットではないと思う。

 

○ 転籍において、民間の事業者が入るケースもノウハウとしてはあり得るが、ただ中間あっせんするだけでは足りず、紹介した後、帰国するまでの責任も引き受けられる業者がマッチングに入らないと、送出し国との関係でそごが生じて、実効性が失われると思われる。

 

○ 民法・労働法上、雇用契約での転籍制限は一定程度可能である。契約期間を定めることで、やむを得ない事由がなければ労働者は辞職ができず、使用者は解雇ができない。

これは外国人であろうが日本人であろうが契約上は同じである。

ただし、労働法上、拘束防止の観点から制約があり、契約期間を定める場合の上限は原則3年までで、その場合でも1年を超える契約については、1年を超えれば労働者は辞職が可能になる。

よって、契約上の拘束は1年までということになる。 ○ 民法・労働法上認められるものより強い拘束効果を入管政策上認めるべきかという問題については、人材育成のためのコスト負担や民法・労働法との整合性も重要になる。

つまり、契約期間設定によって、そもそも契約上可能である転職制限を通じた人材育成コスト回収策ではなお不十分かどうかを検討する必要がある。

このほか、不当な拘束問題の解決のためには、監理団体等によるマッチングの促進や、育成が円滑に継続できて、転籍も可能になるような育成プロセスの標準化、スキル形成状況の個人別化によって転籍を支援するといった様々な施策を考慮する必要がある。

 

○ 転籍制限について、法的な側面を考えると1年が妥当であり、問題や課題があった場合は1年以内でも転籍を可能とするのがよいのではないか。

 

○ 受入れ時のイニシャルコストの負担については、優秀な人材を受け入れるために一生懸命取り組んでいる監理団体や受入れ企業のモチベーションを下げるようなことがないように制度を考える必要がある。

政府や政府機関による入国前教育の強化や入国前のマッチングの精度向上が、コスト負担の軽減にもつながるのではないか。

 

○ 現行の技能実習制度が副次的に機能してきた地方の中小企業の人材確保を阻害しないよう、地方への影響を十分に考慮して要件等を決定していく必要がある。

 

○ 労働契約法の考え方からすれば、転籍は1年経過すれば認められるべきということは理解しているが、1年ごとに当たり前のように転籍されてしまっては人材育成機能を十分に果たすことが困難となり、制度の目的を達成できない。

賃金や事業所の場所以外の事由で適応しにくい理由がある場合には、在留期間の中で一度だけ、同業種のみで認めるべきである。

また、その時期については、配属後半年以内とすることが妥当である。

 

○ 転籍時のコスト負担について、入国に掛かった費用については、送出機関からの請求書等のエビデンスを添付し、次に受け入れた企業へ請求し、負担させるべきである。

また、入国に掛かった費用のみならず、人材育成に要した経費の負担についても検討する必要がある。

 

○ 現行の技能実習制度では、転籍に向けた取組は基本的に監理団体が行うこととなっているが、監理団体に問題がある場合、外国人本人が外国人技能実習機構に届け出ても転籍支援は監理団体の義務であるから、すぐには動いてもらえない。

転籍の手続が長期化すると外国人本人が生活に困窮し、最終的に失踪に至るのが実態ではないか。

人権侵害があった場合の転籍の実効性を確保していただきたい。

また、外国人技能実習機構に対してSNSで相談ができるよう予算を措置して対応してほしい。

 

○ 転籍を自由にするとしても現在の制度を前提にすると技能実習及び特定技能では在留資格の変更が伴うため、ハードルが高く、日本人と同様の流動性は生じないのではないか。

また、高度人材であっても転職時に会社から離職証明をもらえないことが多いので、こうした事態を踏まえた上で、実効性のある転籍をできるようにすることが重要である。

 

○ 転籍について、労働者保護の観点から緩和していく必要がある。転籍制限について、1年という期間は一定の妥当性があると思うが、ハラスメントや賃金未払いがあった場合は、その期間内でも転籍を認めることが必要である。

 

○ 転籍の実効性が確保できないと転籍制限の期間を決めても意味がない。

転籍に当たっては、外国人労働者が監理団体経由、あるいは外国人技能実習機構やハローワークといった公的な機関経由なのかを選択でき、外国人技能実習機構やハローワークが機能して転籍先を探す仕組みとするのも考えられるのではないか。

 

○ 技能実習制度では現在でもやむを得ない事由があれば実習先の変更は可能であることをより周知して、変更事由の立証方法を工夫するという実務的な対応も考えられるのではないか。

また、そこに労働法令の遵守を担当する機関が積極的に関与できないか。

 

○ 転籍の実効性の確保は、制度設計とは別次元で極めて重大なことであり、実効性を確保できる取組がきちんとできることが必要である。

 

○ ハローワークのようなところが外国人を担当する部門を作り、予算をつけてマッチングを行うのが一番よいと思うが、それが難しいのであれば、民間事業者で優良なところを選び、相乗的にマッチングを行うことも考えられるのではないか。 

 

 

【国・自治体の役割について】

 

○ 外国人材が地域社会の一員として長期就労できるよう国や自治体、関係機関等による日本語教育環境の整備、住宅環境の整備を始め生活全般への支援に取り組む体制を構築する必要がある。

 

○ 日本人と同様に労働者性を強く認めるのであれば、受入れ側に余分なコストが掛からないようにしていくことが必要である。

特に受入れ時の日本語能力や技能を身につけるに当たっては、国等が関与することで、コストをできるだけ国が負担していくという在り方が必要ではないか。 

 

 

【送出機関及び送出しの在り方について】

 

○ 来日前教育については、日本政府等の支援により、基本的には無償で十分な教育訓練11  機会を供給し、そこで良好な成績を収めた者がマッチングのプロセスに進むことで違法なブローカーによる口利きを防止できるのではないか。

 

○ 現状は、送出機関と監理団体の双方ともにどこが良い機関なのかが分からないことが多いことから、JETRO等を活用し、送出国と日本側双方のBtoBのマッチング支援を行うことで、優良な機関が分かり、選ばれるような仕組みを作るのはどうか。

 

○ 送出しから受入れにおいては、ライセンスを付与され、あるいは等級付けされた受入れ側の仲介機関がしっかりと労働者保護の責任を負うことが必要である。

転籍においても、人材紹介した労働者が帰国するまでの責任も引き受けられるところがマッチングに入らないと、送出し国との関係でそごが生じて、実効性が失われると思われる。

 

○ 来日前教育をある程度充実させることで、前職要件を課す必要はなくなるのではないか。

前職の証明書を必要とすることで、1つのビジネスが出来上がり、手数料を取る人が現れる。

来日前教育で安全教育や業界・仕事の内容についてオリエンテーションのような形である程度できるのであれば、前職要件はなくしてもよいのではないか。 

 

 

【日本語能力の向上方策について】

 

○ 農業現場では近年、募集に対する応募人数が少なくなってきているとの声が多くなっているところ、入国時の日本語能力試験のN5を必須とした場合、海外就労指向の外国人材の心理的なハードルが高くなり、ますます日本の農業が選ばれなくなってしまう懸念がある。

 

○ 外国人材が就労を開始する前に生活ルールと日本語能力試験のN5を修得するための講習を必須とするのはどうか。

 

○ 入国前に日本語能力試験を課す場合には、日本語能力試験は回数が少ないため、受験機会を多く与えるための方策や試験合格者へのインセンティブ、受講料負担の軽減方策等について検討することも重要ではないか。 

 

 

【その他】

 

○ 外国人材の職場への定着を促進するため、中小企業退職金共済制度の積極的な活用も考えてはどうか。その場合、事業主が拠出する掛金に対する国による助成等も検討すべきである。