技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第7回)
法務省 出入国在留管理庁HPより抜粋
日時
令和5年4月28日(金)10:00~11:25
場所
法務省7階共用会議室
出席者(敬称略)
◎有識者
田中座長、高橋座長代理、市川委員、大下委員、黒谷委員、是川委員、佐久間委員、末松委員、鈴木委員(代理出席)
冨田委員、冨高委員、樋口委員、堀内委員、山川委員
◎関係省庁等
(内閣官房) 小玉参事官、岡野参事官
(出入国在留管理庁) 福原審議官、本針政策課長、藤谷調整官
(厚生労働省) 原口審議官、吉田外国人雇用対策課長、川口参事官(海外人材育成担当)
(外国人技能実習機構) 大谷理事長
議事内容
○ 出入国在留管理庁本針政策課長より、【資料1-1】ないし【資料1-4】に基づき、「中間報告書(案)」について説明。
○ 各有識者より、中間報告書(案)について、下記のような意見があった。
【制度目的と実態を踏まえた制度の在り方について】
○ 目的が人材確保、人材育成の順番になっているが、関係者に説明すると、人材育成があって、労働力を確保していくことにもつながるのだとよく言われている。
したがって、もし二つの目的に軽重がないのであれば、その旨を括弧書きでもいいので明記していただきたい。
○ 新しい制度で企業単独型をどう位置付けるかはこれまで取り上げてきていないので、最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論することが必要である。
また、現行制度における企業単独型の評価については十分議論していないが、ヒアリングを通じて、本来の趣旨に沿った実績や成果があることを伺っている。
また、悉皆的に検証したわけではないとはいえ、悪質事例もほとんどないと認識している。
現行制度下において一定の役割を持って活用されてきたことが何かしらのニュアンスで入ると有り難い。
【外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築について】
○ 「対象職種や分野を一致させる方向で検討すべき」とあるが、現在の制度においても、特定技能制度で受け入れるべき分野として適切なのかという点に疑問が残る。
今後、対象職種や分野を正に議論していく方向であることを考えると、「一致させる方向」とするのは違和感がある。
○ いずれの制度においても、受入れの必要性や妥当性を検証するプロセスを整備し、機能させることが不可欠であるが、この点については、今後の議論の中で実効性も含めて議論すべきである。
○ 「賃金等の待遇面や実効的な技能の修得・評価を含めて日本の企業等が魅力ある働き先として選ばれるよう」とあり、正にそのとおりだが、現状では劣悪な労働環境や処遇の問題がある。
まずはその改善に向け、指針を法律に格上げすることや同等報酬の実効性担保等についても今後議論していくべきである。
○ 今後の重要な課題になるのは、特定技能1号に至る、今で言う技能実習ルートと試験ルートの整合性である。
技能実習ルートで入るスキルレベルと試験ルートで入るスキルレベルとでかい離があると整合性がとれなくなるので、即戦力が実際に確保できるような試験の在り方をチェックする必要がある。
【受入れ見込数の設定等の在り方について】
○ 人手不足の業界に限定し、むやみに対象職種・業種を拡大しないこと等、これから具体的に議論をしていくこととなるが、中間報告書において「人手不足の業界に限定し、むやみに対象職種・業種を拡大しないこと」というのを入れていただくとともに、「その受入れ可能人数については、特定の企業による大量の労働力の確保とならないよう、地域の中小企業に行き渡るような配分等を検討する。」「政公労使による協議体組織を創設し、決定していくことが望まれる。」を追記していただきたい。
【転籍の在り方について】
○ 三つ目の○に追記された外国人の失踪事案に係る一文は非常に重要な部分である。
システムをきちんと作ることも大事だが、このようにフェイルセーフをしっかりと多重にかけていくことは、現行の技能実習制度においても失踪事案は世間や社会からの評価をかなり決めているところであると思うので、非常に重要である。
○ 三つ目の○に追記された一文について、「犯罪の加害者」は少し強い言葉に感じるが、その趣旨として、取締りを強化する方向性だけではなく、失踪やイレギュラーな転籍になった場合にそのまま非正規滞在や法が全く及ばない世界に行ってしまわないように、何かしら元に戻れるような救済の仕組みを作ることも含めて、安定的な社会を作っていく視点からの意見であるものと理解している。
○ 正規の手続を経ないで転籍等した者を単純に不法就労や不法滞在に追いやってしまわないような制度上の工夫が必要である。
例えば、一定期間内に一定の要件を満たせば、事後承認的に元のレールに戻れるような柔軟な仕組みを設けていただきたい。
【国の関与や外国人技能実習機構の在り方について】
○ 新たな制度として技能実習制度が生まれ変わる中で、地方における日本人と外国人を取り巻く環境は大きく変化していくと思う。
その中で、外国人の受入れから就労、日本語教育など、様々な面で解決をしていかなければならない課題があるが、新制度の協議及び運用においては、出入国在留管理庁や厚生労働省だけでなく、各課題に応じて業所管省庁が横断的に連携し、各業界団体並びに地方自治体におけるそれぞれのセクションとの取組の連携を密に図っていただきたい。
○ 四つ目の○について、相対的に不利な立場に置かれた業界や地方においては、格差是正の観点から業所管省庁と自治体のそれぞれが責任を果たすべきという意味だと理解している。
そうだとすれば、「外国人が安心して暮らせる環境整備」という表現では狭過ぎるのではないか。
例えば、「外国人が安心して働ける環境整備」「働く外国人を取り巻く環境の整備」など、もう一工夫していただきたい。
【外国人の日本語能力の向上に向けた取組について】
○ 地域の日本語教育については、教育者の高齢化やボランティアの負担増など様々な課題に直面していることから、国や自治体との役割分担や負担について、今後、慎重に議論を重ねていただきたい。
【その他】
○ 受入れ側と外国人労働者の双方にとって働きやすく、生活しやすい環境を実現するためには、共生の観点や多文化理解を深めていくことが重要である。
そのためには、国民的な議論が重要であり、中間報告書の段階でもその点に触れておくことが重要ではないか。
○ 単に在留資格の見直しだけではなく、外国人労働者に関する基本法の制定も含め、政府として適正な受入れの基本的な考え方を策定することが重要である。
最終報告書に向けては、そのような視点も踏まえて議論することが必要ではないか。
○ 全体に関する印象として、中間報告書(案)は、国際貢献を目的とする技能実習制度の評価できる点を、その仕組みを踏襲して、かつ伸ばそうとしている点、技能実習制度と特定技能制度の問題や課題を解決しようとしている点、転籍緩和の際のコストの問題、地方に対する環境整備などについて言及している点において、非常に野心的であり、評価されてもよいものではないかと思う。
○ 中間報告書(案)には、「受入れ見込数の設定及び対象分野の設定については、例えば労使団体などの様々な関係者の意見やエビデンスを踏まえつつ判断がされる仕組みとするなど透明性や予見可能性を高める方向で、最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論していくこととする。」との記載もあり、これからそういった決定方法についても最終報告書に向けて議論していくという記載がされようとしているにも関わらず、特定技能2号の分野拡大について、出入国在留管理庁の担当課が申し入れ、政府・省庁の方でこのような動きがなされていたというのは、今、私ども有識者会議を開催しているのに、素直に申し上げて、大変、違和感がある。特定技能制度における受入れ見込数の決定方法や、特定技能制度の運用の状況の検証など、省庁ごとに行うのではなく、政公労使で構成される機関を創設していただいて、透明感のある議論をすべきであることを強く主張しているので、より一層、情報の共有をお願いしたい。
(以上)