第1回有識者会議(2022年12月14日)

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第1回) 

法務省 出入国在留管理庁HPより抜粋

 

 

議事要旨 

 

日時

令和4年12月14日(水)10:00~12:10 

 

場所

法務省5階 会議室 

 

出席者(敬称略)

◎有識者

田中座長、高橋座長代理、市川委員、大下委員、黒谷委員、是川委員、佐久間委員、末松委員、鈴木委員、武石委員、冨田委員、冨高委員、樋口委員、堀内委員、山川委員

 

◎関係省庁

(内閣官房)   

小玉参事官、岡野参事官

(出入国在留管理庁)

西山次長、福原審議官、礒部政策課長、本針在留管理課長、稲垣政策調整室長

(外務省)   

髙澤人権人道課長、前川国際安全・治安対策協力室首席事務官

(厚生労働省) 

 原口審議官、吉田外国人雇用対策課長、川口参事官(海外人材育成担当) 

 

 

 

議事内容

 

○ 冒頭、田中座長より、【資料1】に基づき、本会議の開催趣旨について説明。

 

今後の会議の運営について、【資料2】の運営要領案のとおり決定。

 

○ 出入国在留管理庁礒部政策課長より、【資料3】に基づき、「技能実習制度及び特定技能制度の現状」について説明。

 

○ 外務省髙澤人権人道課長及び前川国際安全・治安対策協力室首席事務官より、【資料4】に基づき、「技能実習制度に対する国際的な指摘」について説明。

 

○ 出入国在留管理庁礒部政策課長より、【資料5】に基づき、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する論点(案)及びヒアリングの実施方法(案)」について説明。

 

○ 各有識者より、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する論点(案)やヒアリングの実施方法(案)などについて、下記のような意見があった。 

 

 

 

【技能実習制度と特定技能制度の制度趣旨について】

<見直しに当たっての基本的な視点> 

 

○ 農業、水産加工、建設業、縫製業といった国内の産業で深刻な人手不足が生じており、生産年齢人口が減少に向かっていることも明らか。技能実習生を受け入れている産業について、特定技能制度に吸収するという方法も含め、正面から労働者を雇用し、受け入れることができるようにする方策も議論すべき。

 

○ 人手不足は極めて深刻であり、労働者人口の減少が引き続き想定される中で、中小企業にとって外国人材の受入れは必須。人権重視を大前提として、国際貢献をしっかり果たし、なおかつ、国内の人手不足への対策として有効な手だてとなるように、日本で学び、働きたいと思っている外国人、中小企業、それらを受け入れる地域、我が国と送出国にとってよりよい制度のありようを検討したい。

 

○ 各種エビデンスに基づくならば、日本は海外労働の目的国としての人気を上昇させてきており、この傾向は今後も当面続く。日本への流入圧力が高止まりすることを前提とした改革が必要。

 

○ 移住仲介機能とそれを稼働させるためのコストは国際労働市場においては必須。また、マッチング機能も必須であり、技能実習制度はそうした機能を果たしてきた。国際労働市場のメカニズムを踏まえるならば、技能実習制度の単なる廃止、技能実習制度が担ってきた機能を単に廃止する、及び厳格化するということは、かえって人権状況を悪化させる可能性が高い。

 

○ 外国人の定住化、子育てや介護、年金という今後の暮らしも踏まえた視点が必要。定住化や今後の暮らしにかかわる見通しも持った議論を希望する。

 

○ 技能実習生が暮らしやすい環境作りは自治体が果たす役割が大きい。過疎地と都市部、様々あり、自治体の体力も違う中で努力をしているが、国と緊密に連携して対応することが必要。日本がしっかり実習先として選ばれていくよう、また、担い手不足の解決にも資するよう、制度を見直していくことが必要。

 

○ 外国人労働者を受け入れるための制度の見直しに際しては、次の4点を踏まえるべき。

①女性活躍、高齢者就労促進、生産性向上といった手を打っても外国人労働者は必要で、受入れの拡大は不可避であり、受け入れた際のデメリットが顕在化しないよう、また、社会の分断を招かないような制度設計が必要。

②日本人労働者と同じ処遇、生活者としても必要な支援を受けられること。

③外国人労働者の就労ニーズは多様化しており、在留の条件は明確化しつつ、長期滞在の道が開かれるべき。

④日本の労働市場改革と平仄を合わせた制度設計とすべき。例えば、有期契約から無期契約への転換など外国人について平仄がとれているか。

 

○ これまでは日本は魅力的な働き先であったが、今後は外国から日本が選ばれるよう努力すべきことを意識することが必要。送出国における賃金も向上しており、近隣国との人材獲得競争もある。外国人にどのように日本社会になじんでもらえるか等の観点から議論することが必要。

 

○ 個別ケースを見ることも重要だが、全体観も見る必要がある。個別ケースに引きずら3  れて全体が見えなくなるのは問題。データに基づいた議論や課題の背景分析をしっかりすべき。

 

○ 依然として技能実習生含む外国人労働者の人権侵害の問題は後を絶たず、外国人労働者も増え続けている。国籍問わず、全ての労働者の人権が保障されることが重要。労働者が安心して働き、生活できる環境整備が喫緊の課題。小手先の見直しではなく、労働者保護の視点に立った政策を総合的に検討することが不可欠。

 

○ 今回の議論は日本の将来の姿に関わる。単なる人手不足対応ではなく長期的な視野をもって議論したい。諸外国の事例を含めエビデンスを踏まえた政策、EBPMを進めるべき。

 

○ 社会の分断や治安悪化を防ぐため労働市場への悪影響を考慮したシステムづくりを行うべき。

 

○ 外国人労働力を安く使うという考えでは国際競争に勝てない。人材育成による生産性向上や労働市場のクオリティを高めることが必要。

 

○ 国際労働移動として秩序あるマッチングシステムの整備が必要。

 

○ 外国人受入れ制度は相互補完関係にある。技能実習制度を見直すなら特定技能や他の制度も含めて改めて考えることが必要。 

 

 

 

<技能実習制度>

 

○ 技能実習の人材育成を通じた国際貢献という制度目的と国内の人材確保という実態のかい離は、誰の目からみても明らか。この状態を継続することは、日本の国際的な地位を危うくする。制度の存廃に正面から回答する時期ではないか。

 

○ 全国の中小企業で多くの実習生が働いている。

人手不足がきわめて深刻となる中で、制度を労働力確保のために活用している実態は否定できないが、人づくりによる国際貢献もしっかり行われている。

労働者人口の減少が続いていく中で、中小企業にとって、外国人材の受入れは必須である。

人権尊重は大前提の上、特定技能制度の分野の拡大、技能実習制度については、人づくりによる国際貢献と、現実的な人手不足の対応という、両方の役割を果たす制度として、また、特定技能制度へのエントリーステップとなる制度として、何らかの形で存続させるべき。

 

○ 多くの優秀でまじめな技能実習生が、日本語を含め技能修得に励んでおり、技能移転と国際理解の促進という、国際貢献に大きな役割を果たしていると認識している。こうしたことを評価、検証した上で、受入れ環境の整備と人権尊重を含め待遇改善に向けた検討をしていただきたい。

 

○ 米国国務省レポートは、国際機関や各国の移民政策担当者など国際的な移民政策の専門家の間ではほとんど参照されておらず、これを以て国際的な評価と同一視することは適当ではない。

 

○ 国際労働市場においては情報の非対称性、及び過大な需給ギャップが発生するものであり、これらを乗り越えるための送出し機関や監理団体などの移住仲介機能は必須。

技能実習生の負担する手数料はこうした機能を稼働させるためのコストが個々の労働者に転嫁されたものと考えられ、それ自体は韓国の雇用許可制など、国際労働市場で一般的に見られる現象で日本に固有のものではない。よって、国際労働市場のメカニズムを踏まえるならば、技能実習制度の単なる廃止、技能実習制度が担ってきた機能を単に廃止する、及び厳格化するということは、かえって人権状況を悪化させる可能性が高い。

 

○ 技能実習生を労働者として受け入れている実態は否定できないが、監理団体や実習実施者は、実態と葛藤しつつ、制度のスキームに沿って正当に受入れを行っているものが大部分を占めている。

この目的と実態のかい離は、必ずしも監理団体や実習実施者だけの責任ではなく、送出機関や技能実習生本人の来日の真意、また、国内外に存在しているブローカーの問題もある。

監理団体や実習実施者だけが悪いと決めつけるのではなく、不適切な送出しをしている送出機関や仲介するブローカーを取り締まる方策や失踪対策などを総合的に議論していくべき。

 

○ 技能実習制度と特定技能制度については、実態としては労働者であるから両制度を統一したほうがよいという意見もあるが、明確に役割をすみ分け、両制度を存続させるべき。

 

○ 技能実習制度の目的と実態のかい離が様々な問題の背景になっている。

制度の存続可否も含めた議論をすべきであり、制度がどう利用されているかや、労働条件や賃金水準の実態を改めて確認すべき。

 

○ 技能実習制度に関して、目的と実態のかい離という問題が生じており、このかい離のある状態というのは是正が必要だと思うが、目的に合わせる、それから実態に合わせるということの二つの選択肢の間に、幾つかの複数の組合せがあるのだろう。

 

○ 技能実習制度について、諸外国から問題を指摘されているということは、技能実習生が追い込まれていくという構造的な問題があるのではないか。開発支援と同レベルでの技能移転が本当にあるのか疑問に感じる業種も中にはある。

 

○ 技能実習制度における課題が、制度固有の問題なのかも検証し、特定技能も含めたほかの在留資格と併せて検討することが必要。

 

○ 技能実習制度の趣旨にのっとり、途上国等への技能の移転を進めつつ、日本企業のグローバルな競争力を強化している企業単独型の事例もある。

また、団体監理型においても、優良な取組をしている実習実施者もあることから、このようなグッドプラクティスをいかに増やしていくかということも議論すべき。

 

○ 重要な論点は、悪質な事業者を排除しつつ、優良な取組をする事業者をどのように増やしていくかである。

技能実習制度を廃止して、特定技能制度に一本化するにしても悪質な事業者を排除出来る保証はない。

 

○ 技能実習生本人や受入れを行っている企業からも話を聞きたい。

 

○ 技能実習制度が具体的にどう利用されているか、賃金水準や労働条件などの実態がどうなっているか、ヒアリングなどを通じて改めて確認すべき。

 

○ 技能実習制度のメリットは、人材育成が組み込まれている点にあるが、技能移転だけで説明するのは無理があり、労働力としてきてもらうという実質は否定しがたい。

しかし、技能移転や人材育成と労働力としての活用は矛盾しないのではないか。 

 

 

 

 

<特定技能制度>

 

○ 特定技能は正面から外国人労働者を入れている制度であり、これを発展的に手直ししていくことが一つの方向。制度開始からまだ数年が経ったばかりなので、技能実習で実施された方策で使えるものも取り込みながら、改善策を議論すべき。

登録支援機関の質担保、送出機関の手数料徴収の規制策、家族帯同など。

 

○ 特定技能1号については、在留期間の通算に含めない、家族帯同を認めない、いわゆる移民政策ではないとした制度当初の考え方は尊重して、まずは日本人の雇用を守りながらも今後の在り方を考えていくべき。

 

○ 特定技能については、政府主導で分野追加など検討できてしまうプロセス、登録支援機関の実効性など見直すべき事は多い。

 

○ ポストコロナにおける需要の急拡大やアジア地域の少子高齢化を含めた深刻な労働力不足が見込まれるなか、必要な人材を確保するためにも特定技能の活用は急がれる。

深刻な労働力不足に直面しているコンビニ、鉄鋼などのインフラ関係業種は、対象を拡大すべき。

特定技能2号への移行についても、選定基準や選定プロセスの透明化を確保した上で、他業種にも拡大すべき。

特定技能2号は、企業にとっても幹部登用等を見据えた中長期的な視点から人材の育成ができる。

 

○ 論点案に留意点として書かれているが、特定技能制度の在り方についてもしっかり論点案の第1に明記することが必要。

また、国内で人材確保の努力をしてもなお労働力が不足している分野に限り受け入れる、という制度趣旨を踏まえれば、この間各業界で取り組まれてきた人材確保、処遇改善などを見直しの議論において踏まえることが必要。

論点案への追記と、業所管省庁からの資料提出・報告をいただきたい。論点については、関係団体へのヒアリング項目にも盛り込み、確認すべき。 

 

 

 

【キャリア形成について】

 

○ 技能実習制度と特定技能制度との接続について、外国人材がキャリア形成の道筋を明確に描くことができるキャリアパス制度の構築は必要。

技能実習制度から特定技能制度への移行は、技能実習ルートが8割を占め、農業経営の現場でも、特定技能は入門的な面があり、受け入れている農業経営者にとっても安心して迎え入れられ、また、特定技能に移る外国人材も安心して特定技能制度へ行けるという面がある。

 

○ 技能実習生が技能修得のために来日しているという実態はいくつかの調査からも明らかであり、特定技能外国人及び技能実習3号の賃金水準をみても、市場賃金に引き直6  した技能実習生や元技能実習生の賃金は明確な上昇を示しており、技能実習制度のスキル形成力を示している。

国際貢献という観点からも、持ち帰ったスキルを母国の検定、資格等にスムーズに接続するための国際的な資格の相互認証システムの構築が議論されるべき。

 

○ 人権という観点において、国際労働市場で最もワークするのが、スキルレベルの向上である。

送出国政府を始めとして、送り出す労働者のスキルレベルを上げることが、最もこうした点に寄与するというエビデンスがある。こうしたスキル形成及び国際的なスキルポータビリティーについても視野に入れた改革が必要。

 

○ 技能実習生が日本での滞在期間が長くなると同時にスキルが向上していくことは、本人にとってはもちろん有益であると同時に受け入れる企業にとっても重要な観点。

外国人労働者を人手不足を埋める一時的な労働者としてみるのではなく、日本の社会の中で活躍してもらうという観点が重要。

 

○ 技能実習の1号、2号を適正に修了した技能実習生は、現場でも大切で重要な人材。本人が特定技能への移行を希望した場合、その技能を更に磨きつつ、日本社会で活躍できる環境整備が必要。 

 

 

 

【転籍について】

 

○ 人材育成という制度目的からは、技能実習は実習実施計画に従い、実習実施者である一つの雇用主の下で労働を続けることが必須の条件であり、転籍・転職が原則として認められていない。

このために、雇用主が無理なことを言っても技能実習生は従わざるを得ず、それが技能実習生への様々な人権侵害を発生させる基礎的な背景・原因となっている。

 

○ 転籍については、地方への影響も十分に考慮して議論すべき。仮に無条件に転籍の自由が認められることになれば、地方の実習実施者が外国人の入国の足掛かりとなってしまう。

技能実習生等の意志も尊重しつつ、原則1回に限り、同一職種の転籍を認めることや転籍前後での企業間の費用負担の在り方についても検討が必要。

 

○ 労働力としての位置づけを正面から認めるのであれば、転職制限は再考が必要。その際には、民法628条など有期雇用に関する契約上の取扱いを踏まえて転職制限の意味を議論することが必要。 

 

 

 

【管理監督体制や支援体制について】

 

○ 現行の技能実習制度の基本的な枠組みというのは引き継ぐ形で、優良な監理団体による日本語を含む技能習得への支援強化、特に地方での特定技能外国人材を含む住居環境、住居確保などの生活面における支援などが必要。

 

○ 求人側と求職者が遠く離れた国際労働市場において、送出機関などの移住仲介機能及びそれを稼働させるためのコストというのは必須。

技能実習制度における送出機関や監7  理団体は、こうした移住仲介機能及びマッチング機能を果たしてきたと捉えることができる。

 

○ 登録支援機関は許可制の監理団体に比べ指導監督の機会が少ないと思われるし、登録支援機関の数が増えており支援メニューの細分化や価格の統一が起こることも考えられる。外国人労働者の仕事から日常生活までの支援をワンストップで行える機関も少なく、今はまだ技能実習ルートが多く問題が顕在化していないが、いずれトラブルが起きることが容易に想定される。総合的な支援や行政がもっと関与できる非営利性の組織に改めていく等の見直しが必要。

 

○ 技能実習の監理団体の中には、体制や制度に関するノウハウの面で疑念を抱く団体があるのも事実。監理団体の今後の在り方の検討が必要。

 

○ 本当に熱心な監理団体や登録支援機関の人たちが、そこまでやるかというぐらいに技能実習生や特定技能の外国人の方を支援していることもあれば、一方で、どこからも支援されないまま失踪に至ってしまって、失踪した先で不法滞在かつ違法就労という状態になってしまい、その先で労災に遭ってしまうという深刻なケースも見られる。

 

○ 技能実習制度を一元的に監督している機関として、外国人技能実習機構があるが、創設時の想定よりも監理団体、実習実施者ともに増えており、大きく制度として拡大をしている。このことも踏まえ、機構の強化も含めた見直しが必要。

 

○ 生活支援や現場で支援する人が疲弊してきており、日本全体として、この先日本で一緒に暮らしていく人たちをどう受け入れるかを考えていく必要がある。

 

○ 社会の中で孤立したり、居場所が不安定な人たちには、犯罪の加害者にも被害者にもなり得る脆弱性がある。治安対策の基本は、そのような人をどのように社会の中に包摂していくか。

外国人は、日本で生活し働く上で、日本人よりも大きなハンデを負っている。直接的で実効性のあるサポートを提供できる仕組みを構築し、普通の来日外国人が犯罪に手を染めなくても済むような環境整備が重要。 

 

 

 

 

【日本語習得について】

 

○ 外国人の就業、教育、生活、全てにおいて日本語が高いハードルになっている。

日本語習得に向けた環境作りが喫緊の課題だが、基礎自治体だけでの対応は限界がある。